58.一塔両尊(いっとうりょうそん)について

 日蓮聖人は佐渡流罪中にはじめて曼荼羅本尊をお書きになられました。
 これを「始顕本尊」(しけんほんぞん)といいます。
 中央に南無妙法蓮華経と書かれた画幅の掛け軸のことです。
 この画幅のことを曼荼羅本尊といいますが、「ご本尊さま」と略称しています。
 画幅に図式された釈尊などの仏・菩薩・鬼子母神さまを木像でおまつりすることもあります。多くはお祖師さまの木像が主となっています。
 しかし、木造で曼荼羅に書かれた(勧請)、仏・菩薩を作ることは大変です。妙覚寺には高さ30センチほどのお厨子に略式の木像が安置されています。
 現在は宗教に対して安定した時代ですので、大きな仏像を作ることは容易ですが、日蓮宗は迫害の歴史を刻んでいましたので、すぐに持ち出しができることが必要でした。
 そこで、考えられたのが一塔両尊の木像形式にして、四菩薩を加えることだったと思います。
 一塔とは、法華経の宝塔品に説かれている、多寶仏が入られている塔のことをいいます。妙覚寺の勉強会でちょうど、この宝塔品を勉強しています。多寶仏は釈尊の説かれている法華経は皆、真実であると証明されました。この宝塔に釈尊もお入りになられました。すなわち、釈尊と多寶仏のお二人の尊い仏様が宝塔のなかにお座りになられたのです。これを一塔に釈尊・多寶仏の両尊がお座りになった。一塔両尊といいます。
 別には、二仏並座(にぶつびょうざ)ともいいます。
 さて、この宝塔の中より釈尊はお弟子さん達にある指示をされました。このことが大事なところです。
 釈尊は自分の余命が少ないことを知らせて、この法華経を滅後に説くことを指示されたのです。
 つまり、一塔両尊の大事なメッセージは、釈尊の亡き後の法華経の継承であったのです。
 そして、日蓮聖人が示されている曼荼羅本尊は、私達がその継承者として、シッカリお題目をお唱えすることに他ならないのです。
 四菩薩とは、湧出品に説かれている地湧の菩薩で、上行・無辺行・浄行・安立行菩薩のことです。
 一塔両尊に四菩薩を木像として、本堂におまつりしているお寺が多くみられます。
 妙覚寺においても、小さなお厨子の勧請はありますが、曼荼羅の前に一塔両尊と四菩薩の木像をお造りし、その前に現在のお祖師さまを安置したいと思っています。