25.日延法尼の水行について

 昭和63年10月6日、65歳にて遷化された日延法尼について、私は多くの学んだことを伝えたいと思っています。
 若い人の中に、日延法尼を知らない、覚えていないということを聞くと愕然とします。
 15年も経つとそういうものかと思います。檀家の顔を見て歳をとったなと思い、日延法尼の亡くなった歳をこえた檀家をみてよかったなと思っています。
 祈祷をする僧侶は一般に短命と言います。ですから60歳を過ぎると祈祷はしないほうが良いと言います。
 祈祷は気力でするものですが、体力も必要です。
 水をかぶる、いわゆる水行も年齢とともに体にこたえてきます。心臓に負担がかかるのでしょう。
 奥の院の御前様は滝に打たれていて体に負担がかかりました。血圧にも影響して倒れられました。お弟子さんなどが気にかけておられましたが、行者の身としては欠かせなかったのだと思います。
 日延法尼もお滝の道場やお寺でずいぶん水行をされていました。弟子も朝勤の前に水行をすませて御宝前に参ります。身を清めて気持のいいものです。
 なぜ水行をするのでしょうか。
 妙覚寺の檀家のなかには水行をされた人がたくさんいます。
 その一つの理由は俗に言う罪障を落とすためです。
 しかし最近ではどこのお寺の檀家も水行をする人はいないようです。
 またお経を読みお題目を唱えることも薄れてきているようです。
 昔は病気平癒を信仰に頼っていましたが、現在は医者に頼っています。生身の人間ですから薬に頼るのはあたりまえのことです。
 日蓮聖人も漢方薬を服されています。四条金吾さんという檀家は医学を嗜み日蓮聖人の胃腸に良い薬を処方されていました。
 現在の医療があれば日蓮聖人も長生きされたことと思います。
 しかし医学では解決できない病気があると説くのが仏教です。
 そのためには信心をし徳を積まなければならないと説いています。
 また先祖などの供養をしなければならないと説いています。
 私はそのとうりだと思います。
 法華経の勧発品28には薬で病気が治ったと思っても次から次へと病が生じると説いています。根本の治癒はされていないからです。
 頭の痛いのが治ったら胃が痛くなる、病院にいって検査して薬を飲み治ったと思ったら次は肝臓が悪いというふうに、次から次へと病が起こると説いています。
 それを治すには南無妙法蓮華経と唱え仏・法・僧に供養することと説かれています。
 私たちは罪の障り、業を持っています。
 自分一人の力ではどうすることもできません。
 法華経の力、すなわち釈尊の功徳をいただくのです。
 妙法蓮華経の五字に具足していると日蓮聖人は言われます。
 水行はその力を頂き、その力をつけるためのものです。
 それを行力と言います。
 日延法尼はそのようにされてきました。ご信心に励みましょう。